賃金減額を伴うグレード格下げの有効性(L産業事件東京地判H27.10.30)

労働弁護団の勉強会で標記の件の発表を聞きました。

事案は、管理職として勤務していた原告が別のプロジェクトの担当になり、これまで行っていたポストは同僚が引き継いだが、その後プロジェクト終了した際に管理職の空きポストがないため一般社員に降格になり、基本給が10万円以上減額となりボーナスも大幅に減らされたというものです(ただし、支給されていなかった残業代が支払われるようになったため年収ベースだと5パーセント程度の減収にとどまる)。

東京地裁は「使用者は、労働契約上の根拠を有する場合は、業務上の必要に応じて、人事権の行使としてその裁量により勤務場所や担当業務を決定することができる」とした上で
降級についても「不当な動機目的を持ってされたものであるとき若しくは原告に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるとき等、特段の事情がある場合には、人事権の濫用として無効となる」
として、原則的に降級も使用者の裁量としました。

どのような業務を行わせるかについて、社会の変化が速く必要な業務の内容がどんどん変わっていっている現状で、使用者に裁量がないとすると、円滑に業務を遂行できないのは事実です。ですから、業務の配置に使用者が一定の裁量を持たせるのはやむを得ないことだと私も思います(ただし、現状の裁判例は労働者個人の事情を極めて限定するのはやりすぎではないかとの感想を持っていますが、)。
しかし、そのような使用者側が裁量を持つ必要性は業務配置について認められれば一応目的は達成できるのであり、給料の金額についてまで裁量を認める必要性はさほど高くありません。
むしろ、給料の金額は、雇用契約の核心部分です。これまで、会社の裁量で不利益変更できるとすれば、労使間が対等の理念を否定するものです。また、労働者の生活を根底から破壊しかねません。

従って、人事異動を伴う場合でも一般的な降格と同様に降格をせざるを得ないやむを得ない事情がある場合に限定すべきです。

なお、この事件は控訴されていますが、控訴審で和解になっているようです。和解の内容については、不明ですが、記録の閲覧をする価値はあるのではないかと思います。

参考裁判例 コナミデジタルエンタテイメント事件(東京高判H23.12.27)、日本ガイダント事件(仙台地裁H14.11.14)、エーシニールセン・コーポレーション事件(H16.3.31)

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